
就職先を決めるとき、新卒者はもちろん、転職者にとっても福利厚生は注目ポイントとして挙げられます。今回は、なぜ福利厚生という制度があるのかについて解説していきます。
企業が福利厚生を導入する目的とは?
福利厚生というと、厚生年金や社会保険などの加入をイメージするかもしれません。厚生年金や社会保険なども「法定内福利」と呼ばれる福利厚生の一つではあります。ですが、それ以外にも社員旅行や社宅、社食なども「法定外福利」と呼ばれ、福利厚生に含まれるのです。
福利厚生とは、これら法定内福利と法定外福利を併せた「非金銭報酬」、現金で支給される給与や賞与以外の報酬のことを指します。
では、なぜ企業は、わざわざ給与や賞与とは別に福利厚生を導入する必要があるのでしょうか。ここには大きく二つの理由があります
● 節税
一つめの理由は、節税対策です。会社(法人)側のメリットとして、福利厚生に係る費用は経費扱いとなり、法人税が非課税となります。これは、個人事業主においても同様です。会社側だけではなく社員も同様に、福利厚生として得た報酬は非課税所得となります。福利厚生は会社と社員の双方に、節税対策としてのメリットがあるのです。
● 人材確保
二つめの理由は、人材確保のためです。今や福利厚生も会社選びの指標の一つとして、重要視されています。たとえば、同業種、同規模の会社に採用された場合、やはり少しでも福利厚生が充実している会社を選びたくなるでしょう。優秀な人材を他の企業に奪われないよう、環境を整えているという意味合いもあるのです。
なぜ福利厚生に社員旅行が入るのか
企業が福利厚生を導入するのには、もう一つ理由が存在します。それこそが、社員旅行が福利厚生に含まれている理由です。
社員旅行は社員を労い、モチベーションをあげる効果を期待しています。日ごろの頑張りに対する、会社からのお礼の気持ちを表しているのです。加えて、社員旅行など社内レクリエーションを通じて、部署の垣根を超えた交流を期待できます。会社としての団結力を強めることができるという、副次的効果も期待できるでしょう。
しかもそれらの旅行に掛かる費用(交通費、宿泊費、飲食費)は損金扱いとして、経費に計上できます。
ただし、社員旅行が福利厚生費として認められるためには条件があります。事前に社内規定を作成することと、その規定の中に金額の明記が必要です。内容は、社員全員が対象となるものでなくてはいけません。
さらに、定めた金額は「社会通念に照らして妥当な金額」を設定する必要があります。福利厚生を導入する立場の社員は、「妥当な金額」について税理士に相談するといいでしょう。
規定は金額だけに限りません。社員旅行は、全社員数の半数以上が参加し、かつ4泊5日以内でなくてはなりません。
もし、自己の都合で旅行に参加しなかった人に金銭を支給する場合には、給与の支給として課税の対象となってしまうので、注意が必要です。(以上は国税庁の定めによるものです。)
社員旅行の本来の目的は、前述したように社員を労うということにあります。おまけとして節税もできる、という点も念頭に置いておきましょう。
労働環境の悪化が叫ばれる昨今、労いの気持ちを忘れず、社員を気遣った福利厚生を導入する企業は、求職者や社員の高評価を得られるのではないでしょうか。
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